銀河団からの非熱的放射




銀河団のなかには、Mpcぐらいのスケールでひろがった非熱的電波ハロー を持っているものがある。このことは、エネルギーがGeV程度の相対論的 電子が銀河団空間に存在していることを示している。さらに、そのような 銀河団はさまざまな状況証拠から現在衝突中であると考えられている。 一方、電波ハローのある銀河団では、非熱的電波を出す電子が宇宙背景放射光子 を逆コンプトン散乱して非熱的硬X線放射を出すことが長いこと予想されて いた。実際、最近になっていくつかの銀河団からそのような非熱的硬X線 放射がうかってきたが、その起源についてはまだはっきりしていない。

相対論的電子がどのようにして銀河団空間につくられるかはまだ はっきりしていない。その一方、N体+流体の数値シミュレーションからは、 銀河団が衝突する時に銀河団ガス中で衝撃波がたつことが予想されている。 このことから、衝撃波面での一次Fermi加速によって相対論的電子が作られ ているのではという示唆がなされてきた。

ここでは、衝突衝撃波加速モデルのもとでの銀河団からの非熱的放射 の進化についての我々の結果を紹介する。より詳しい情報は Takizawa & Naito 2000 (ApJ vol.535, p.586) を参照されたい。


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エネルギー(波長)別にみた非熱的放射の進化の様子。上から (a)逆コンプトン散乱による極端紫外線(65-245 eV)、 (b)逆コンプトン散乱による軟X線(4-10 keV)、 (c)逆コンプトン散乱による硬X線(10-100 keV)、 (d)シンクロトロン放射による電波(10MHz-10GHz)。


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シンクロトロン電波放射(10MHz-10GHz)の表面輝度分布(実線の等高線) と銀河団ガスからの熱的X線放射の表面輝度分布(点線の等高線)の スナップショット。ただし、衝突軸と垂直な方向からみた場合。


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上の図と同じような図だが、衝突軸と30度傾いた方向からみた場合。


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